ロルの定理(Rolle's theorem) とは1691年にフランスの数学者ミシェル・ロルによって発表された微分積分学における定理である。
定理
有界閉区間 [a,b] 上で定義された連続関数 f(x) が開区間 (a,b) で微分可能であり
- f(a) = f(b)
を満たすとき、導関数 f′(x) は、開区間 (a,b) 上に零点を持つ。すなわち、
- f′(c) = 0
を満たす c ∈ (a,b) が存在する。
c は1個とは限らず、また c の位置の特定はできない。条件を満たす c が 1 個以上存在するということを保証する存在定理である。
ロルの定理は後にラグランジュやコーシーによって示される微分法における平均値の定理の特殊な場合であり、また、平均値の定理などの証明にも使われる基本的な定理である。
1691年にフランスの数学者ミシェル・ロルが著書の「代数学」(Traite d'algebre) で発表したためにロルの名がついているが、ニュートンやライプニッツによって微分が発見されるより前の12世紀にインドの天文学者バスカラも同様の定理を述べたとされる。
証明
f(x) が x によらない定数であれば、任意の x ∈ (a,b) に対して f′(x) ≡ 0 となる。
f(x) が定数でないとする。f(d) ≠ f(a) となる d ∈ [a,b] が存在する。f(x) は有界閉区間 [a,b] 上で連続なので [a,b] 上で最大値および最小値を取る。
f(d) > f(a) とすると、ある点 c ∈ [a,b] で最大値 f(c) を取る。このとき、a < c < b であるから、(a,b) において f(x) が微分可能であることから、 x = c において微分係数 f′(c) が存在し
である。 f(c) が最大値であることから分子は 0 以下であり、分母は h の符号によって変わるため、 h の 0 への近づき方によって右辺の符号は異なることになる。右辺の極限は存在するとすれば 0 でなければならず、微分可能性により右辺の極限は存在するので、 f′(c) = 0 である。
f(d) < f(a) であるときも同様にして最小値を取る点 c ∈ (a, b) で f′(c) = 0 となることが分かる。
いずれの場合でも f′(c) = 0 となる c ∈ (a,b) が存在することになる。
関連項目
主な引用元
参考文献
- 杉浦, 光夫 『解析入門I』 東京大学出版会〈基礎数学2〉、1980年。ISBN 978-4-13-062005-5。